
田中伸英弁護士(プロアクト法律事務所)の言葉丨目次
メモしたい法務の言葉とは?
田中伸英弁護士(プロアクト法律事務所)の言葉
田中伸英弁護士(プロアクト法律事務所)「『もし調べてみて何も出てこなかったら一体誰が責任をとるんだ』と強く抵抗されることがある。そんなときには、『何も出なかったらみんなでビールで乾杯しましょう』と返すとよい。」
田中伸英「調査対象事実(調査スコープ)の設定」ビジネス法務2025年12月号20-23頁
中堅組織内弁護士による分析(個人的な考え)
ビジネス法務の最新号は、皆さまご覧になったでしょうか。社内調査のプロフェッショナルが登場し、場面ごとのポイントを実務的かつわかりやすく解説されています。
その中でも私が印象に残ったのは、田中先生の次の言葉です。調査スコープを設定する際、「何も出てこなかったら誰が責任を取るんですか?」─言い換えれば「あなたたち弁護士が責任を取るんですか?」という強い反応に対して、「もし何も出てこなかったら(出てくると思うからこそスコープにしているのだが)ビールで乾杯しましょう」と軽やかに受け流す。このしなやかさは、法務に携わる者として学ぶべき姿勢だと感じました。
古典的な研究でも、ユーモアが対立を和らげ、建設的な対話を生む効果が指摘されています。たとえば、社会心理学者のメアリー・ダグラス(Mary Douglas)が『Humour: A Very Short Introduction』(Oxford University Press、2007年)で示唆されている古典的な見解の一つに、「ユーモアは緊張を緩和し、社会的な境界を一時的に曖昧にすることで、対立を回避しながら共通理解を形成する媒介となる」というものがあります。
まさに、ユーモアを通じて硬直した場面に柔らかさを持ち込み、相互の信頼を保ちながら議論を進める⋯法務における「プロフェッショナルな対話」の理想形といえるでしょう。
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