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[報道]『第三者委員会、裁判・当局とずれる「事実」 フジでは当事者反論』(日本経済新聞)丨Legal as a Service®

図表・データ | 組織内弁護士研究ノート® | 法務部とインハウス弁護士の金貨

日本経済新聞の月曜版「税・法務」は、多くの法務部門や弁護士の方がご覧になっていると思います。今週の注目記事を取り上げながら、皆さまのご意見も伺えれば幸いです。学びの途中ではありますが、情報交換の場として活用いただければと思います。

1. 今週の注目記事

第三者委員会、裁判・当局とずれる「事実」 フジでは当事者反論

掲載紙:日本経済新聞 | 掲載日:2025年5月30日 | 記事URL: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOTG016L50R00C25A5000000/

2. 組織内弁護士の視点

本記事は企業の不祥事調査を担う第三者委員会と裁判所や捜査当局との認定のずれが指摘される事例を取り上げています。フジHD、スルガ銀行、日大アメフト部などの事例を通じ、第三者委員会の調査目的や証拠収集手法の違いを指摘した上で、結果的に当事者が強く反発するケースもあることを取り上げています。その一方で、日本固有の制度である第三者委員会には独立性や調査範囲に限界があり、その運用の在り方が問われているという問題提起を行っています。

私自身、アメリカの外資系企業に勤務する組織内弁護士として、日米の差は「ディスカバリー制度の有無」と「多額の損害賠償を背景にした訴訟リスク」に起因するという記事内の見方については、大きな要因である可能性があると実務的に感じています。学術研究でも日米の法制度の違いが企業の自浄作用に影響する可能性が指摘されており、一つの見方として参考になります。ただし、断定するほどの深堀りはできておりませんので、あくまで視点の提供にとどめたいと思います。

(参考:英語で記述された日本の「第三者委員会」を扱った文献)

種別著者・媒体概要
法律オンライン誌Bruce Aronson “The Toshiba Corporate Governance Scandal: How Can Japanese Corporate Governance be Fixed?” JURIST (2015)東芝事件を素材に、第三者委員会の役割と限界を米国のガバナンス基準と比較しつつ検討 jurist.org
学術論文“Third-Party Committees and the De Facto Power of Soft Law” (Osaka Univ. L. Rev. 英文号, 2021)制度の法源が「ソフトロー」にとどまる点を分析し、米国の外部調査との違いを示す ResearchMap
👑 実務解説Global Investigations Review “Japan: Challenges and Solutions for Cross-Border Investigations” (Practitioners’ Guide, 2025)MHMの梅津先生らの英語による実務解説で2025年と新しく組織内弁護士も社内で共有できそう。日本企業が海外当局対応を行う際、第三者委員会レポートがどこまで証拠価値を持つかを論じる globalinvestigationsreview.com
ブログ型評論Oxford Business Law Blog “The Toshiba Incident and its Implications” (2021)第三者委員会報告書が投資家保護に与える影響を、英国・米国の開示制度と対比 Oxford Law Blogs
比較ガバナンス研究“Independent Directors and Team Production in Japanese Corporate Governance” Asian J. Law & Society 2023AM&Tの宮本先生がご執筆と思ったら、正しくは中央大学の宮本 航平先生のご執筆でした。ケーススタディで「独立社外取締役」と第三者委員会報告を併用する日本型モデルを分析し、米国モデルとの機能差を指摘 Cambridge University Press & Assessment

3. 関連情報(記事内の発言者)

  • 後藤元 教授(東京大学大学院法学政治学研究科)―「裁判所は訴えられた人に責任があるかどうかを判断するため、第三者委は企業が社会的信頼を回復するために調査する。
    • 2003年 東京大学法学部卒業(学士(法学))
    • 2003年 東京大学大学院法学政治学研究科助手
    • 2006年 学習院大学法学部専任講師
    • 2008年 学習院大学法学部准教授
    • 2010年 東京大学大学院法学政治学研究科准教授
    • 2019年 東京大学大学院法学政治学研究科教授(〜現在に至る)
  • 齋藤弘樹 弁護士(岩田合同法律事務所)「ヒアリングに応じた人を守る必要もあり、誰がどんな発言をしたかを開示することは難しい」「どのような証拠と心証に基づいて事実認定したかについて、ブラックボックス化を避ける工夫が求められる」
    • 2010年 東京大学法学部卒業
    • 2012年 東京大学法科大学院修了
    • 2013年 最高裁判所司法研修所修了(66期)、弁護士登録
    • 2014年 潮見坂綜合法律事務所入所
    • 2017年 岩田合同法律事務所入所
  • 森幹晴弁護士(東京国際法律事務所)―「第三者委員会は日本固有の制度だ。米国では不適切事案があれば被害者が訴訟を起こすことが一般的で、賠償金も多額に上ることが多い
    • 2004年〜2015年 長島・大野・常松法律事務所
    • 2016年〜2019年 日比谷中田法律事務所(2017年よりパートナー)
    • 2019年 共同代表として、東京国際法律事務所を設立

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(了)

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