問題の所在+ソリューション[各連載回に共通]
第4回の読了により、得られる情報
ガーナー教授の教科書は、多種多様なレゴブロックを、部品と色ごとに整理したような「魔法の整理術」そのものです。はじめに、教授は、長々下手くそな法律文書を書く私達のために、合計20のルールを与えてくれます。この20のルールは、すべての法律文書に共通し、さらに、3つの箱に分類されています(下記)。
第1部:すべての法律文書における原則
目次 Garner, B. A. (2023). Legal Writing in Plain English, Third Edition: A Text with Exercises. Chicago: University of Chicago Press.
1. 思考の枠組み
2. 文章のフレーズ
3. 言葉の選択
読者は、読了により、「思考の枠組み」という3つのうち1つの箱にしまってある鍵『§ 3. Order your material in a logical sequence. Present facts chronologically. For other material, make the order (a) deductive, (b) comparative, or (c) spatial. Keep related material together. / § 3. 資料を論理的な順序で並べる。事実を時系列に並べる。その他の資料については、(a)演繹的、(b)比較的、または、(c)空間的な順序にする。関連する資料はまとめておく。』を理解して、自分・チームの業務を改善できます。
[No.3/20] 時空が歪んでいる法律家の文書
- 法律家は、法律文書をドラフトする過程で、文章の「材料」をどのように論理的に配置してよいのか混乱している。例えば、英文契約書の「定義」における「アルファベット順」の条項列挙は(ガーナー教授の立場によれば)取引の論理や時系列を無視した無意味な手法である。
- (ガーナー教授の考える)最適なアプローチは、条項の重要性の順位、当事者の行動の順序を考慮したものであるべきである。配置には4つの手法がある―①時系列的配置、②演繹的配置、③比較的配置、④空間的配置である。これは、常に意識的な計算に基づいて選択されるべきである。
- 法律家は、時系列を扱う際に、しばしば、時系列を踏み外した(逆時系列:in reverse chronological orderな)文章を作成している。[筆者註:例えば、「2024年1月◎日、被告◎◎県は、◎◎の申請を拒絶した。原告は、2023年8月から現在に至るまで、当該給付を受けられない状態にある。―ここでは、2024年1月が最初に来ており、配置に失敗しています。]
ガーナー教授の教科書(第3版)―敬意をもって強く推薦―
Garner, B. A. (2023). Legal Writing in Plain English, Third Edition: A Text with Exercises. Chicago: University of Chicago Press.
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(了)
※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。
Problem Statement (問題の所在)「英文契約書は好きでない」「法律英語が上達しないのはなぜ」「欧米弁護士の思考で英語の法律文書が書けない」― 法律英語のライティングの悩みは日本の法律家に共通します。私も、です。
ソリューション 2022年、Airbnb法務部の研修で、魔法のような体験がありました。名著『Legal Writing in Plain English』のガーナー教授から直接学ぶ機会があったのです。「できなかった」理由がすっと理解できました。そこで、毎週1記事、名著を「分析」し、一緒に(同期やライバル達よりも)法律英語に少しだけ強くなっていきませんか? ― 精読して蓄えていきましょう。
想定する読者 法律家・法務部門・司法修習生/ロースクール学生の皆様