【日曜朝連載】引用魔法丨名著精読!『Legal Writing in Plain English』第30回

問題の所在+ソリューション[各連載回に共通]

Problem Statement (問題の所在)「英文契約書は好きでない」「法律英語が上達しないのはなぜ」「欧米弁護士の思考で英語の法律文書が書けない」― 法律英語のライティングの悩みは日本の法律家に共通します。私も、です。

ソリューション 2022年、Airbnb法務部の研修で、魔法のような体験がありました。名著『Legal Writing in Plain Englishガーナー教授から直接学ぶ機会があったのです。「できなかった」理由がすっと理解できました。そこで、毎週1記事、名著を「分析」し、一緒に(同期やライバル達よりも)法律英語に少しだけ強くなっていきませんか? ― 精読して蓄えていきましょう。

想定する読者 法律家・法務部門・司法修習生/ロースクール学生の皆様

読了により、得られる情報

ガーナー教授の教科書は、まず「すべての法律文書に共通する」合計20のルールを提供してくれます(連載第1回〜第21回参照)。

第2部では、ガーナー教授が「あなたの英語を、分析的・説得的に働かせる技術」を厳しく鍛えます。私は外資系企業で合計12年以上勤務しており、「英語で読み書きできる」だけでなく、「分析的・説得的に働いてくれる英語の技術」が求められていることを痛感しています。

あなたの英語は、誤解があれば恐縮ですが単に日本語を英訳しただけの「情報伝達の機械的なソースコード」になっていませんか?(私はこのフィードバックをもらったときは悩みましたが、前進を決意しました。)

情報は文字として伝達(トランスミット)されるだけでは不十分で、相手に影響を与え、こちらが期待する行動変容や回答を引き出すために「分析的・説得的に働く」必要があります。第2部では、英語の「羅列」から「伝わる英語」への進化を一緒に勉強していきましょう!私もまだまだ未熟ですが、精読を通じて皆様と一緒に成長したいと考えています。

要点

メモ

ガーナー教授は、「分析的および説得的な英語ライティング技術」(analytical and persuasive writing)のためのに、本文と脚註の使い分けについても指導してくれています。教科書ではかなり詳細に米国の法廷文書を例にしていますが、ここでは、日本人の私たちが通常利用する範囲の要点に絞って説明します。

  1. 引用文献(citations)は脚注(footnotes)に移すことで本文をすっきりさせることを肝に銘じる。
  2. 脚注には「文を入れない」(keep the footnotes free of sentences)ようにする。
  3. 過去多くの法律文書では、「本文中に引用が散りばめられており」(encountering all the citations in the text)、これが読者にとって大きな「妨げ」(thought-interrupters)となってきた。
  4. 過去には技術的制約(technologically impoverished world)から引用が本文に挿入されていましたが、現代では(ソフトウェアを使って起案しているので)脚注に移すことが推奨される。
  5. 脚注を使用することで、本文は簡潔になり、読者は重要な情報に集中できる。特に、裁判所の意見やブリーフでこの方法を使うと、文章が格段に読みやすくなる。

ガーナー教授の教科書(第3版)―敬意をもって強く推薦―

Garner, B. A. (2023). Legal Writing in Plain English, Third Edition: A Text with Exercises. Chicago: University of Chicago Press.

現在・将来、英文の法律文書を扱う法律家・法務部員の方は必携です(Amazonを見る

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<後日更新いたします>

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(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

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