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『AI弁護士業』第4回丨AIで変わるリーガルリサーチの勝ち筋―データが示す効率x品質の臨界点[1/3]丨海外名著📕を一緒に学ぶ

図表・データ | 組織内弁護士研究ノート® | 法務部とインハウス弁護士の金貨
『AI弁護士業』第4回丨AIで変わるリーガルリサーチの勝ち筋―データが示す効率x品質の臨界点[1/3]丨海外名著📕を一緒に学ぶ

William Liu, AI-Powered Law Practice: Boost Efficiency and Profits with AI – A Practical Guide for Solo and Small Law Firms (The AI Business Series, paperback ed., July 30, 2025).  

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毎週日曜日の朝に更新し、日本ではまだ翻訳されていない名著に光を当ててまいります。日本の「弁護士業界」においても、規模を問わず、日々の業務を効率化するためにAIをどのように活用するかが議論されております。

しかし⋯すでに答えが示されているのではないか、と唸らされたのが『AI-Powered Law Practice: Boost Efficiency and Profits with AI』(Amazonでハードカバを購入)という原典でございます。私はAmazonにて原典(ハードカバー)を購入いたしました。これからユースケースを模索し、コミュニティーで議論を重ねることも大切ですが、むしろこの英語で記された原典を丁寧に読み解くことの方が、日本全体にとって大きな学びにつながるのではないかと感じ、新しい書籍としてご紹介させていただきます。

もっとも、私自身もまだ学びの途上にございます。本ブログでは、原典に深い敬意を払いながら、私が理解した範囲を例え話とともに整理し、基礎的な部分のみを備忘録として独自にまとめております。そのため、ぜひ直接原典にあたっていただくことを心からお勧めいたします。

わかりやすく例えると?

🏃‍♂️ 第2章の内容は、「マラソン大会」にたとえるとわかりやすいかもしれません。従来の法的調査/リーガルリサーチは、重いリュックを背負ってフルマラソンを走るようなものです。時間も体力も消耗し、ゴールにたどり着くまでにヘトヘトになります。AIは、そのリュックを軽量化し、しかも電動アシスト付きのランニングシューズを与えてくれる存在です。

⏱️ たとえば、本来3時間かかるリサーチが12分で終わるのは、マラソンの42キロが1キロのジョギングに変わるようなものです。結果として、[注:原著者の米国のデータであるが]週末を犠牲にすることなく、数百万円単位の和解金を上乗せする成果を実現できます。道具に投資する費用は月に数万円で済み、得られる利益は数百万円に達するため、効率と収益の差は歴然です。

🛡️ さらにAIは単なる時短だけでなく、隠れた近道を見つける「裏ルート案内人」でもあります。人間の調査では見落とす判例[注:原著者の米国の判例法の環境を念頭に置かれたい]や論点を提示し、戦略の幅を広げてくれます。導入は段階的に行うことで、安全に走力を伸ばせるトレーニング計画と同じです。AIを活用すれば、直感に頼る走りからデータに基づいた戦略レースへと進化し、確実に勝ち残れるのです。

法的リサーチ革命の現実

筆者は、週末を法的調査/リーガルリサーチに費やす従来型実務を、AIが定量的に覆す事実を提示する。

  • ある受任事件では、相手方が6つの法域(ジュリスディクション)の裁判例を盛り込んだ47ページの書面を提出してきた局面で、AI活用により短時間で反論を構築し、和解額を約5.7億円(380万ドル)へ引き上げたと語る。
  • 筆者の調査によれば、構造的にみると(米国では)「平均的な弁護士は請求可能時間の35%を法的調査/リーガルリサーチに費やす」
  • しかし、筆者は、AIなら「3時間を12分」に短縮できるとし、時給は約6万円(400ドル)、15時間の調査コストは約90万円(6,000ドル)から約12万円(800ドル)へ圧縮できると算定する。概要、差し引き14.2時間、約85万円(5,680ドル)の回収余地が案件ごとに生じ、月8〜12件の複雑調査を扱う前提では、月間で約680万〜1,020万円(45,440〜68,160ドル)の回収可能性になると述べる。
  • 他方、AI研究ツールの費用は月約3万〜7.5万円(200〜500ドル)で、年率ROIは7,000〜11,600%に達する。
  • 筆者は、AIは時短装置にとどまらず「人間が見落とす先例や論点を発見する能力」により成果の質を押し上げると結論づける。

お休みにお目通しをいただき、ありがとうございます。日本の弁護士業界全体のお役に立てば幸いです。

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ご相談・講演のご依頼などはこちらからご連絡を賜れますと幸いです。


(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。