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今週の注目記事
法律などのAIシステム連携 弁護士ドットコム、みらい翻訳と実験
掲載紙:日本経済新聞 | 掲載日:2025年10月10日丨注目記事を執筆された記者:(非署名記事)
記事によれば、弁護士ドットコムはみらい翻訳と共同で、標準規格「MCP(モデル・コンテキスト・プロトコル)」を用い異なるAI同士を連携させる実証実験を開始します。企業向け「みらいAIエージェント」と法律特化「Legal Brainエージェント」を接続し、法務調査や文書作成を効率化します。まずアンダーソン・毛利・友常法律事務所の一部社員で試行し、年内に全社員へ拡大後、商用化を検討します。
組織内弁護士の視点
私がアソシエイトだった頃、商業登記簿の翻訳はすべて手作業でした。既に抹消されている新株予約権の内容を延々と英訳していたとき、「この作業に本当に意味はあるのだろうか」(なお、依頼者が必要であれば意味がある)と思ったことを覚えています。
あれから十数年。いまはAI翻訳の時代です。
当時は当然のように正当化されていた、英訳作業に対する「クライアントへのご請求」。
今の時代、同じ請求を見た法務部はこう感じるのではないでしょうか。
「言われなくてもAIを使ってほしい」
「翻訳に何十万円も請求されても、社内で説明ができない」
もちろん、弁護士がダブルチェックを行うべき書類については、その費用が正当に発生するのは当然です。ただ一方で、AIの精度がここまで高まった今、「英語業務に慣れていない留学前のジュニア・アソシエイト弁護士によるヒューマンレビュー」がどれだけ付加価値を持つのか─ここは冷静に見直すべき時期に来ているように思います。
クライアントとしては、むしろ書類ごとにこう指定しても良いのかもしれません。
「この文書はAI翻訳でOK」
「この契約書は10〜15分だけ人間の目で抜け漏れを確認してほしい」
AI時代、法律事務所が「当然に使うかどうか」ではなく、クライアントがどう使ってほしいかを明示的に指示する時代になりつつあるのではないでしょうか。
そして、翻訳作業にAIを導入していない法律事務所様は、至急、翻訳作業にAIを導入されることを謹んで(強く)推奨いたします。本来別の作業により稼げる時間が、失われていると言う指摘があります(下記の記事参照)。
皆さんはどう思われますか?
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(了)
※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。
日本経済新聞の月曜版「税・法務」は、多くの法務部門や弁護士の方がご覧になっていると思います。今週の注目記事を取り上げながら、皆さまのご意見も伺えれば幸いです。学びの途中ではありますが、情報交換の場として活用いただければと思います。
今週は、オルツ社の記事なども興味深かったのですが、Legal Techを優先させていただきました。