法学系以外の学会に入る3つのメリット―日本観光研究学会 全国大会での発表を終えて(法学×観光学)



法学とは異なる分野の「学会」で学んでみよう

本日、沖縄名護市に行き、日本観光研究学会の全国大会で発表を行ってきました。本エントリーの目的は、法曹の読者の皆様(特に若い組織内弁護士・実務家の先生)に、法学系以外の学会へ所属することの3つのメリットをご紹介いたします。

3つのメリット

①「法学」は他学問と重なりやすく「学際性(interdisciplinary)」が多分高いので他学問での「学会」を見つけやすい

まず学際性が高いのが法学。社会のルール(法律)と交わらない文系の学問は少ないかもしれません。例えば、観光学においても、観光という社会の出来事を研究するため、法律が必ず関連しています。

②「法学」は多分専門性が高くとっつきにくいので、他学問の研究者の先生が「サブ領域」としてかけあわせるには面倒くさい分野(空白地帯になりやすい)

次に「法学」を履修してこなかった場合、法学は多分とっつきにくい分野かもしれません。

ちょっと文献をなぞったりかじっただけでは法学(法解釈含む)の体系的な理解は難しい。そのため、自分がメインのフィールドで「サブ」として「法学」との学際的な分野を研究することは、おそらく、「面白いがコストがかかる」分野なので「ぽっかりと空白地帯」になっていることがある印象です。

今回私が発表した「イベント民泊/イベントホームステイ」についても、観光学の過去の研究を私なりに調べましたが、宿泊施設供給を「制限」する要素である「法制度」に着目した研究はありませんでした。

つまり、あなたや私が若くても、研究テーマやメモで貢献できる余地が沢山あるはずです。

③翻って法律実務の法解釈や事実認定などの理論に他学問の理論や研究を応用できる

法学を勉強して法律には強くなっても、法律が交わる実社会の複雑な事象を解明するには、他学問の助けが必要です。特に、ビジネスクリエーション(ルールを変えていく)ことを21世紀の組織内弁護士が期待されている場合、隣接する学問分野で何がホットイシューなのか、近時どのような理論や研究が進展しているのかは、規制当局を説得したり、新しいリスクを察知する上で重要となります。

「大規模イベント時の宿泊施設不足」という観光学にとっては興味深い事象について、「法学」という専門的な立場から、宿泊施設の供給を制限したり促進したりする法律・法解釈を仕組みとして分析するのは、観光学の先生方には「新しい視点」として珍しく思われた印象です。

逆に、質疑応答では、観光学の先生方から寄せられた質問は、法律家同士の話ではでてこない切り口の質問が多く、逆に、法律村に住む私にとっては、その部分が重要なのだ、であるとか、このような懸念が観光学の観点からは提唱されうるのだなと感じました。

最後に―Think Outside the Box!

これは私達若手がプライベート・プラクティスの弁護士や組織内弁護士としてのキャリアの描き方にも似ておりますが、「会社法」「金商法」で学会で発表できるようになるには学者・実務家の「大家」がいらっしゃいます。つまり、研究も小さな論文も学問的に貢献できる余地が乏しいわけです。

他方で、この世の中にはまだ手つかずの「学際領域」がまだまだあるわけです。

私はいち早く、観光学会に入り、観光学(なお、立教大学や東洋大学が日本では観光学で有名です)を少しずつ学び、観光学に少しでも「法学」の観点からお役に立てればと思っております。

最後に、「学会」じゃあどう探すのですが、CiNii(https://ci.nii.ac.jp/ja)であなたの関心があるテーマを打ち込んだら、きっと見たこともない学会の専門誌がでてくるはずです。そう、そこです。

(人により考え方は様々ですが、私の信条としては)人と同じことをやっていても、天才・秀才はさておき、私のような割り振るパラメータの総量が彼・彼女らほど高くない普通の人は「トップクラス」になることは多分難しい。だからこそ、人がやっていないこと・やりたがらないことに真面目に力を入れることでもしかしたら沢山種を撒けるかもしれません。


(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

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