*このコーナー(投稿)は、将来、論文・プレゼンテーション・会議・報告書・国内外の上司・同僚との会話に利用できそうな有意義な定義・データ・リンクを短くまとめたものです*
感想と共有したい点
下記4つの講演を目的に勉強に行ってまいりました。
「攻めと守りの法務の視点から見た、日本企業における『ジェネラルカウンセル』の重要性—経産省 国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会での議論を踏まえて」(名取法律事務所弁護士 名取勝也氏)
第58回比較法政シンポジウム「グローバル・ガバナンスの実務と最新諸論点」
「企業ガバナンスと『弁護士との通信秘密保護制度(いわゆる弁護士依頼者秘匿特権)』」の重要性」(矢吹法律事務所弁護士 矢吹公敏氏)
「法務コンプライアンスの役割と組織設計、紛争解決対応-金融/日系外資系比較の視点から」(斎藤法律事務所弁護士、元AIGジャパン・ホールディングス株式会社専務執行役員ジェネラルカウンセル 斎藤輝夫氏)
「日本企業におけるジェネラルカウンセルの重要性と日本企業が抱える法務体制の課題―グローバル事業会社の視点から」(株式会社日立製作所執行役常務ゼネラルカウンセル、リスクマネジメント担当 児玉康平氏)
私の最も聞きたかった国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会座長の名取先生の講演会、これは本当に見事に「日本の法務機能の弱いところ」を先生のIBM、Apple、ファーストリテイリングでのご経験に基づいて見事に描き出していたと思いました。
逆に、日立のジェネラルカウンセルが講演された日本の多国籍企業の和製ジェネラルカウンセルの話は、業種が違うということもあり勉強になるものが多い反面、米国のGeneral Counselが担っている役割(ベン・ハイネマン氏のいう「広範なリーダーシップをもった役割」)と何か少し違うのではないかというモヤモヤが残っており、今の段階で、私の中ではうまく消化できておりません。
名取先生のご講演のまとめ
日本の国際競争力を強化するために
問題意識:日本の企業が国際競争力を失いつつあるのではないか、法務機能で弱いところがあるのではないか(改善するところがあるのではないか)?
戦略性・Creativityが若干の改善の余地があるのではない(一般的な傾向)
リスクの見極めの力が弱いのではないか(理論的なリスク)?リスクを取らないとリターンはない。リスクをコントロール・ミティゲート(低減)していくことが求められる。
日本の法務機能は、欧米に比較して、見極めが「Practical」ではない。理論的・抽象的に考えすぎている。
米国の企業はRiskMitigation(低減化)の方策を考え尽くす「提案力」が求められ、その機能を強化してきたのではないか【著者:私もこの論に強く賛成します】。
抽象論・理論でひたすら抵抗する「法務」
名取先生の個人的経験に照らして、「起こりそうもないこと」「ミティゲーションを尽くしていない状況で」、法務部だけがひたすら「抵抗」するような場面を見かける。
【筆者:事業部でも組織内弁護士でもこの場面を「あるある」と思われた方も多いのではないでしょうか】。
日本企業は、このような法務を背景に、リターン・オポチュニティを失っている、かつ、意思決定のスピードが遅い(交渉や意思決定時に、事前のシュミレーションが尽くされた上でのデリゲーションがなされていないのではないか?例:「持ち帰って検討させていただきます会議」「米国側は授権された2名程度に対して10名以上ぞろぞろ出てきて8名はノートをとっている会議」)。
リスクの見極めの力が弱いのではないか?
- 企業法務の先例にあることは難しくない=解説書や判例を調べれば苦慮しない
- 実際に企業法務の力が問われるのは=現実は立派な先生が詳細に書かれた本にも書かれていないような問題=答えがないから見解がだせませんというのはできない、そこでどう経営をサポートできる法務機能を果たせるかがコアな問題
経営陣の課題=ゴルフでショットを打った後にキャディに相談する人はいないはず
経産省の調査に基づくと、日本の経営陣は、法務機能を早めに活用しないのではないか。
これは、法務=事後的な問題処理機能と見ているからかもしれない。
ユニクロの柳井さんは、「私はこういうことを考えている=法的問題を解決してほしい=当社に引き直すとどのようなリスクがあるのか?」といった質問を1日に何度も法務部に聞いてきた。経験的に、法務の見解をこれほど事前に求める経営者あまりいないのではないかという印象がある。
ゴルフで、ショットを打った後に、キャディにアドバイスを聞く人はいない(どこにバンカーや池があるか)
名取先生の名言
名取先生の講演を通じて、私が第2回以降の国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会(法務機能強化 実装WG )で私が委員として役に立てることが見えてきた気がします。
深掘り資料
(了)
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