“鏡の法務”―依頼者の目から見た法務部?「のらりくらり法務を打ち破る決断」(4/4)丨リーガルリスクマネジメントの教科書

「鏡にうつったあなたのコミュニケーションは?」「クライアントは選択肢がないから我慢しているだけではありませんか?」― 今回のシリーズは、耳が痛いかもしれません(私も読むと大なり小なり絶対にないとは言えず反省しきりです)。ここでは、事業部門のAさんになりきって、弁護士・法務部門Bさんとのやりとりを見て、私含め普段のコミュニケーションを一緒に自省・改善する修行コーナーです。

頼者・事業部門に寄り添う「最高のサービス」を提供する弁護士・法務部を一緒に少しずつ目指してまいりましょう🤝 Happy to helpです。

偏屈な法務担当者に打ち勝つ!商標権の侵害警告に立ち向かった事業部門の逆転劇

企業のブランディング戦略において、新製品の名前やデザインは非常に重要な要素です。しかし、法務部門からの過度な商標リスクの警告に阻まれ、事業部門が苦しむ場面は少なくありません。

登場人物

Bさん(リーガル部門): 偏屈で高圧的な法務担当者。自分の意見に固執し、他者の意見を認めずパワハラ気味な態度で接する。人事部からの警告前科あり。

Aさん(事業部門): 新製品のブランディング担当者。熱意を持ってプロジェクトを推進する標準的な男性サラリーマン。


Aさん(事業部門):
「Bさん、今回の新製品のネーミングとデザインですが、非常に好評で、ブランド戦略においても大きな成功が見込めます。市場投入に向けて商標の確認をお願いしたいんですが、大丈夫そうでしょうか?」

Bさん(法務部):
「はぁ…ざっと見ただけでも問題だらけだよ。商標調査の結果、類似商標が複数見つかってる。こんな名前とデザインじゃ、訴えられるリスクがあるんだ。訴訟になったら会社全体に影響するって、分かってるの?」

Aさん:
「類似の商標があることは認識しています。ただ、デザインの修正案もいくつか用意していますし、ネーミングの調整も検討しています。リスクを抑えながら進めるためのアドバイスをいただけますか?」

Bさん:
「アドバイス?事業部門が法務の判断に口を出すこと自体が間違いなんだよ。法律のことは法務が決める。デザインをいくら変えたところで、リスクは消えないんだよ。ネットの知識で法律を語らないでくれ。」

Aさん:
「もちろん、法務の判断は尊重します。ただ、現実的に進めるためには、私たちもリスクを理解して対応策を講じたいんです。具体的なリスク軽減策を一緒に探していただけませんか?」

Bさん:
「だから言ってるだろ!リスクを冒すなんて馬鹿げてるんだよ。僕の案に従うか、全部やり直すか、それ以外に道はない。」

事業部執行役員 Cさん(突然現れて):
「そうか、B君。それなら君に全てを任せて、次の経営会議で発表してもらおうじゃないか。具体的なリスクと、それをどう解決するか、全員の前で君の案を説明してもらおう。」

Bさん(驚いて動揺しながら):
「えっ、Cさん、そんな…僕がやるのはリスクを指摘することで、発表とかは…その…」

Cさん(執行役員):
「いやいや、君がここまで熱心にリスクを訴えてくれるのだから、それを役員たちにも伝えないといけない。大事なことだろう?リスクのない提案をして、会社全体に貢献するんだから、きっとみんなも喜ぶよ。」

Bさん(しどろもどろで):
「いや…あの…ちょっと、そこまでは…もう少し考え直して、別の方法も検討して…」

Aさん(微笑んで):
「Cさんのおっしゃる通りですね、Bさんの案をベースにして進めれば大丈夫ですから、よろしくお願いします。具体的な案を楽しみにしています。」

Bさん(苦笑いで):
「そ、そうですね…また検討します…。その、少しだけお時間を…」

まとめ:理不尽な法務対応には冷静かつ毅然とした反応を

これも架空の事例ですが、柔軟に対応し、リスクを管理しながら前進する姿勢こそが、企業全体の成長を支える鍵となります。法務もビジネスも同じゴールに向かって歩んでいることを再認識し、協力し合える体制を構築していくことが重要です。事業の現場で、法務がどう見られているのか、今一度考え直してみてはいかがでしょうか?

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[リーガルリスクマネジメントの教科書とは?]

リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版)は、2023年に出版された教科書です。リーガルリスクマネジメントという臨床法務技術を独学で学んでいただけるよう、心をこめて作成いたしました。きっと喜んでいただけると思います。

渡部友一郎『攻めの法務 成長を叶える リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版、2023)

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(了)

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